北前船ロマン研究会 
 
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北前船ロマン に関する小説等を紹介するページです



1.北前船のロマンを描いた小説


 

①伊東 潤 『江戸を造った男』、朝日新聞出版社

 1657年、徳川4代将軍家綱の後見役で老中であり、藩政改革に辣腕を振るった稲葉正則(小田原藩当主)は、
 伊勢材木商人で、土木事業家としても才能がある河村瑞賢に幕命として、日本列島の海運航路の開発を命じた。
 食糧不足に悩む巨大都市・江戸に、奥羽の米等の物産を届ける新たな物流経路を構築するためであった。
 河村瑞賢は知恵と並外れた胆力で何度も危地をくぐり抜け、江戸と大坂までの安全な輸送航路として、
 1671年に「東廻り航路」、1672年には「西廻り航路」という海の大動脈を開いた。
 西回り航路は、東北から江戸間での東回り航路に比べて航路の距離は4倍近いが、
 安全性と途中の寄港地との交易を考慮すれば、西回り航路が物流の主要ルートとなった。
 航路の開発以外に、大坂・淀川治水工事や越後高田藩の銀山開発の苦労についても描かれている。


②玉岡 かおる 『帆神 - 北前船を馳せた男 工楽松右衛門』、新潮社

 播州高砂に1743年に生まれ、漁師から身を起こし、豪胆な船乗りとして名を揚げ、時代を先取りする海商となった松右衛門。
 千石船の「買積船」を運行するだけではなく、弱点だった帆の改良に取り組む。
 北風家の支援も得て、太糸の播州木綿を使った厚地広範の丈夫な帆布を織り上げた画期的な「松右衛門帆」を完成させた。
 25反の1枚帆は真艫の風を受けると船の速度は一気に速くなり、瞬く間に全国に普及し江戸海運に一大革命をもたらした。
 高田屋嘉兵衛が憧れた、知られざる快男児を活写する長編歴史小説。



③司馬 遼太郎 『菜の花の沖』全6巻、文春文庫

 1769年に淡路島の貧家に生まれ、船乗りになるしかなかった高田屋嘉兵衛は、22歳の時兵庫津に出て水主(かこ)になる。
 やがて、船頭として頭角を現し、北風家の支援も得て、稼いだ資金で独立し、28歳で1,500石積「辰悦丸」を新造し、船持船頭となる。
 幕府の蝦夷地開発計画で脚光を浴び始めた箱館湊(現:函館)に拠点(支店)を置き、現在の函館のまちの基礎を作った。
 国後と択捉の間の択捉航路を開拓し、1800年に兵庫津の西出町に「高田屋」本店を置き独立する。
 やがて大型北前船10隻を建造し、兵庫の本店の他、大坂、江戸、函館に支店を置き、東北、蝦夷地との交易で一代を築いた。
 頑なに国を閉ざし続ける日本と、南下する大国ロシアとのはざまで数奇な運命をたどる。
 (人質としてロシアに拿捕され、カムチャッカに連行されるが、2年後に函館に戻されたあと両国の仲介役として、和解を成し遂げる)、
 を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く。


④平野 他美(たみ) 『海の百万石 銭屋の女たち』、文芸社文庫 

 江戸後期、廻船問屋として加賀国で名を揚げた豪商・銭屋五兵衛。
 代々続いた家業に加え、志高く海運業を興した五兵衛は、功をなして加賀藩の財政を度々救う。
 ところが晩年、藩や地域のためと進めていた潟湖の埋め立て工事で冤罪を掛けられ、無念の最期を遂げた。
 隆盛期には「海の百万石」と称された銭屋五兵衛と一家を支え、共に生きた女たち
 ―母のやす、妻のまさ、長男の嫁のきわ、孫娘の千賀。
 一家への謂われ無き罪を背負い、銭屋再建のためそれぞれが必死に尽力した姿を4代の女たちの視点から描いた壮大な歴史ロマン。
        (カバーページの裏面の紹介の文章を転載)
        (第6回草思社・文芸社 W出版賞金賞受賞作品)


⑤植松 三十里(みどり) 『富山売薬薩摩組』、エイチアンドアイ

 江戸時代の富山藩では藩を挙げて製薬と、使った分だけ後払いの「先用後利」の売薬商法で全国を23の組を組織して歩きました。
 その中でも他国者出入り厳禁の薩摩藩領で行商できたのが「薩摩組」です。
 天保2(1831)年、財政破綻寸前の薩摩藩家老の調所(ずしよ)広郷は薩摩組の能登屋の密田喜兵衛に、
 北前船による蝦夷昆布の搬送と見返りには良質な漢方薬原料を安く卸す密貿易を持ち掛けました。
 運んだ昆布は琉球経由で中国に渡って巨利を生み、巨額の借財で破綻寸前の薩摩藩は甦ります。
 昆布回漕の船が漂流し、米国船に助けられ、5年後に択捉島から身一つで帰国しますが、
 幕府の厳しい取り調べに水主たちは抜け荷の一件は固く口を閉ざし続けました。
  しかし薩摩藩が糾弾されるに至るや調所は服毒自殺を遂げ、一切は闇に葬られます。
 自らの命を賭して仲間や家族、そして藩を救おうとした人々の生きようを、秘されていた
 〝ひとの営み〟の物語として鮮やかに紡ぎ出した衝撃の人間ドラマです。

 
                  
   

  



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